「法の不治はこれを許さず」、知らないで済まされず、痛い目を見てしまう世の中です。とはいえ、非常に膨大かつ内容も多岐にわたる法律を勉強する事は困難であり、ビジネスを行う上で、最低限知っておくべき法律を効率的に勉強できないかなと思った時に標題の本が目に入り読みました。
科学技術全般をわかりやすく解説してくれるBLUE BACKSシリーズで、この本も非常にわかりやすかったです。細かい条文には踏み込まず、あくまで具体的な違反エピソードとこういう法律があると紹介してくれており、普通の人が知るべき範囲を記載されている印象です。
(※逆に、法務部の専門家からすると物足りない本かもしれません。)
本書と付随して調査した内容について、メモとして残しておきたいと思います。
- 製造物責任法(PL法)は、過失なくても責任として発生する。
- 特許における先使用権(日本国内のみ)
- 技術情報漏洩の禁止(不正競争防止法)
- 商品などを表示に関する規制
- 商標登録がなくても法律保護を受けられる可能性(パクリやフリーライドはNG)
- 注意すべき利益相反
- 内部通報時の保護を受けられる通報方法とは
- まとめ
- Tips:瑕疵担保から契約不適合に
■備忘メモ
製造物責任法(PL法)は、過失なくても責任として発生する。
印象的なお話を2つ記載。
(1)仕様書の記載から責任を問われる。
ある製品の事故発生後に複数回テスト検証した際に、仕様範囲内(ギリギリ)の所で動作不良および傷が見られる物があった。そのため、事故当時は仕様内(少し余裕あり)の所でも製品品質による問題が起きていた可能性が否定できず、賠償請求の判決されたとの事。
→営業上の観点から、高い性能仕様を出したい心理になるが、安全品質上まず間違いなく問題が起きない性能仕様として記載すべきである。
(2)不十分な記載
頑丈ではあっても、壊れた時の壊れ方が既存製品より危険になっているとの記載がなく、問題となった。学校で牛乳瓶を落とした時に、破片が飛びやすく後遺症が残るケガを負ってしまった事例があった。
→想定できる事象によるテストを実施し、短所となる部分であっても通知は必要
特許における先使用権(日本国内のみ)
前提として、企業ノウハウを保護するためのセオリーとして2つあります。
1つ目、方法やアイデアを公開する事になるが特許を取る。
2つ目、徹底的に秘密として他社に広めないようにする。
私が勘違いしていたのが、2つ目の秘密戦略をとっていた際に、他社に特許をとられたら、その方法は使えなくなる(許諾を得られなかった場合は)と思ってましたが、先使用権という権利により、【ちゃんと】立証できた場合はその特許で縛られたノウハウをそのまま使用できるみたいです。
→先使用権を立証するためには、
・特許の前に、その該当ノウハウを使っていた確かな証跡が必要。
※日付や客観的に立証できる形(音声・映像・紙など)
参考URL)
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/senshiyo/document/index/setumeiyou.pdf
技術情報漏洩の禁止(不正競争防止法)
法律で保護される「営業秘密」となるには、以下3つの要件を全て満たす必要がある。
(1)秘密として管理されていること
不特定多数の社員が見れる状況ではない。
例、参照できる人に制限がある、部屋やロッカー等、施錠されて鍵がかかっているなど
(2)事業や営業に有用であること
顧客リストや営業ノウハウやマニュアルなど
(3)不特定の者に知られていないこと
→転職時の競合他社への禁止等は細かい状況によって違反かどうか変化するみたいですが(例えば在職時に十分な額の秘密手当や退職時のプラス金など)、そもそも営業秘密になっていないと企業側は裁判もできないので、しっかり管理する必要がありますね。
商品などを表示に関する規制
誤認表示:本来の品質・性能・製造等と異なり、不当に誤認させるような表示は不正競争防止の違反。
景品表示法:不当に本来の仕様より優良と誤認させたり、有利な割引であるかのように有利誤認させる表示は違法
→パンフレット作成時に広報部にしっかり確認する必要があるのは、こういう法律もあるからだと覚えておくと、納得感ありますよね。
※早く審査してくれ~と焦る事になりますが・・・
家庭用品品質表示法
家庭用品の品質表示を適正にわかりやすくすることにより、消費者が商品の品質を正しく認識し、その購入に際し不測の損失を被ることがないよう、消費者保護を図ることを目的に制定された
→家庭用品製造する時もそうですし、逆に他業界でも表示しないといけないと定められている法律もありそうなので、注意。
商標登録がなくても法律保護を受けられる可能性(パクリやフリーライドはNG)
周知表示混同惹起行為(不正競争防止法の中に)
よく知られた社名とか標章とか似たような表示で顧客に、混同させるような事(混同惹起)は違反となる。
→商標なくても戦える可能性あり、逆にパクリは訴えられる可能性もあるので、社内で商標登録されてないから、このデザインはいけますなど言われた際に、本当にそうか承認者は気を付けましょう。
著名表示冒用行為(不正競争防止法の中に)
他人の商品・営業の表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として
使用するのは違反。
→どのくらい著名なのかは定量的には難しいですが、業界内にとどまらず、全国的に知られているレベル。※認識だけではダメらしいので、●●といえば▲▲だとすぐに思いつくレベルの知名度が必要そうです。
注意すべき利益相反
利益相反は、企業経営者、研究者など職務を行う人が、その立場上追求すべき利益と、その個人としての利益が、競合している状態である。取締役がある物件を持っていて会社に販売する場合、個人としては高く販売したい、会社としては適正価格で購入したいという所で決裁権がある取締役の権限で不当に高い価格で購入する事になるなど。
(第3者評価機関の大型スポンサーに評価される側のメーカがなるなど)
→違反行為が起きやすい状況になることを把握しておきます。利害関係と関係者を見て本当に大丈夫か、少し考える必要がありますね。
内部通報時の保護を受けられる通報方法とは
考えたくもないですが、万が一大きな不正行為や事故が起きてしまうであろう時は、頼る事になります。ただ闇雲に内部通報しても、法律的な保護を受けられない可能性があるみたいなので注意ですね。
①勤務先内への通報
→保護される
②監督省庁への通報
→保護される
※営業秘密や個人情報等が漏れないようにする必要があり
③外部機関(マスコミ等)への通報
①/②で改善されないなど相当の理由が認められた場合の通報は、保護される。
まとめ
非常に多岐に法律があるので日頃から常に把握できるわけではありますが、いろいろな法律があります。なので会社で何かと、法務部門や広告部門に相談・確認するようになど周知されますが、会社を守るために必要なんだと改めて認識しました。
Tips:瑕疵担保から契約不適合に
民法改正による瑕疵担保という表現から契約不適合という表現に変化したいみたいです。特に気を付ける事は、瑕疵は受け取って(検収)から1年以内に指摘する事だったと思いますが、契約不適合では事実を知った日から1年以内に指摘する事になるようです。※あくまでデフォルトルールなので契約結べばそちらの条項が優先されます。
詳細は法務のプロに任せたいのですが、少なくとも取引先からこのような話が出た時に戸惑わないようしておきたいと思います。
(開発側はリスク増加したと言えますかね・・・)