30代からの再勉強日記(ビジネス系/IT系の一般論の理屈を考えてみる)

徐々に、新たなタスクを起こし任せる側になりました。将来検討のためにも、一般論やセオリーを勉強・考察し外部へ共有する事で学びを深めたいと思います。皆さんにも役立つ所があれば幸いです。※最近ミッション変更となり、更新頻度落が落ちます。

【書評とマネジメント】 はじめての著作権法(契約時に著作権に気を付けよう)

 何か契約を行う時に法務部にかなりの部分お任せして契約書の案を作成し、調整に動きます。部門の役割分担のため依頼する事に批判はないですが、あまりに頼りきりなのも問題かなと思い、気にしておりました。

 全てを勉強するには時間もかかるので、一旦ユーザとして納品されたシステムの権利はデファクトスタンダードだとどうなるのか、把握するために本書を読んでみました。

 

 

本自体の書評

 非常にわかりやすく記載されている本です。著作権の目的から保有する権利の具体的な効能、また何をすると違反となるのか、筆者の言葉で簡潔に記載されております。お堅い法律の条項が羅列されてあって難解な所だけ補足するという教科書チックな書き方とは違い、実際の判例や身近な問題(JASRACゆるキャラ等)を紹介しつつ、ここはセーフやアウトなど理由とともに紹介してくれております。あわせて、ポイントになる権利に焦点をあてて紹介してくれているので、まずは本書の内容を把握しておけば、実務上で安心できると思います。

 また、コラムや筆者なりのユーモアもあって、そんな行動でも権利発生するのか、またはしないのかなど感心する部分もありました。法務や知財のプロを目指す勉強としては物足りないと本書でも記載されてますが、常識を一通り把握しておきたい実務者レベルならば十分な所は抑えてくれていると思います。

 

著作権で覚えておくべき事

著作権の役割(大きく2つの権利がある)

 文化の発展にむけて、著作物が他人に無断利用されないよう保護するため。

 著作権は下記の2つに大別され、それぞれ権利者を保護する。

  ①財産的な保護をする著作権

  ②本人性やこだわりを守る著作者人格権の2つがある。

 例、コピーされて購入機会をつぶされないよう複製を禁止する。

   自分で作った物を勝手に公表されない。

   著作者としての名前を表示させる。

   著作物のタイトルや中身を勝手に改変されない。

権利発生のタイミング(創作した時に自動発生)

 該当する直作物を創作した時に自動的に発生する「無方式権利」

 (特許などは登録が必要な「方式主義」)

 創作であるため、単純なまとめの作業ではダメ。

 思想や感情を、創作的に、表現して、文芸、学術、美術、音楽の範疇である事

 ※まとめただけのデータベースは発生しないが、創作といえるようにデータの選択や構造立てされているデータベースの場合、権利が認められる可能性はある。

著作権の保持者(お金を出した発注者ではない)

 原則、創作をした本人(アイデア出しではダメ、創作活動をした本人やグループ)

トラブルが起こりやすい発注契約が紹介されてましたが、実際に創作作業をした人と紹介されております。

 例、AさんがBさんにカメラ撮影を依頼したとする。

   著作権を持つのは、撮影をしたBさん

 また、会社の業務指示に基づいて創作活動をしたものは、会社側に権利が発生します。

 例、Cさんが業務時間内に業務として創作活動をしたものは会社権利。

そのため、A社→B社の委託契約でCさんが開発したものは、B社の権利となります。

 ※業務命令に基づくなので、例えば勤務時間中におやつの写真を取った際の権利は、会社ではなく本人権利の判定になるようですね。

著作権の移転(著作権は移転可、帰属先を規定すべし、著作者人格権は移転不可、不行使を約束すべし)

 著作権を譲ってもらえれば使用できるので、契約ならば支払い等の完了タイミングをもって、発注者側に帰属先を変更するようにするのが通例。

 また、著作者人格権は移転できないので、行使しないとするのが通例。

 なぜ、行使しないと契約すべきかというと、例えばデザイナーから何か絵やログを納品したもらった際に、その絵やロゴをそのまま使う事はできますが、著作者人格権に含まれる同一性保護権により、自由な「改変」ができなくなります。色を変えようなど、少しロゴを編集しなおそうなどできなくなります。

 (正確に表現すると、著作者人格権に基づいて訴えられた時に負けるですかね)

 そこで実務上では、発注企業に対して著作者人格権による訴え等はしませんと、「著作者人格権の不行使の特約」を規定して契約するみたいですね。

移転時の注意点

 著作権は包括的にいろいろ権利があるため、著作権の全ての権利を移転させるためには、「著作権著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)を~に譲渡する」と第27条と28条を含むと明確に記す必要がある。※条項でそう規定されている。

 補足)第27条:著作者が二次著作物(改変・翻訳等)を専有する権利を持つ

    第28条:二次著作物の権利の持ち主は一次権利と同一とする。

権利利用の特約(私的利用や引用等、著作物を権利者に無断で使用する事もできる例外もある)

 私的利用なために音楽をコピー、論文や書評のために他人の書籍を引用するなどは問題ないみたいです。後は営利目的ではない完全無料の演奏会など

国際的な保護(基本的に海外でも保護されるが、逆に海外の著作権も注意)

 ベルヌ条約で日本の著作権について海外で守られます。逆もしかり。

保護期間

 原則死後50年。

著作権を使いたい時にはどうするか

 かなりノウハウが必要みたいで詳しくは記載されておりませんが、ライセンス契約を結ぶようです。複雑であり、知財や法務のプロに手伝ってもらうべきともあります。

まとめ

 こういったら語弊もありますが、仁義や道徳や常識の範疇で考えて問題ないと思えれば思える利用方法なら基本的に問題ないと思います。ただし、自分が他人の著作物を使う場合は、しっかり筋を立てて説明すれば、トラブルになる事はまずないのかなと思います。著作権が発生しているかどうか、裁判となった時に裁判官側も悩みようですし、これをしたから創作物だという明確な基準もないです。こういう権利があるという事はまずしっかり覚えておきたいと思います。

 よく契約書の雛型みると、著作権の帰属が冗長だと正直思っていましたが、ちゃんと意味があって記載されていたんだな~と反省しました。あと、第三者権利についてうるさいのも理解ですね、委託先が調達した物を利用したときに、我々が検収した後で、もともとの持ち主から権利違反で使用停止は避けたいので、そこの権利関係は問題ないか、仮にあった場合は委託先の責任を高くするという意図だと理解できました。

 ここまで書いておいて、結局は法務や知財にお任せするのが一番安心なのですが、彼らの表現やリスク指摘について、よりありがたみを感じる事ができそうなのが一番の収穫ですかね。

こぼれ話

 着メロと着うたの権利の違い。

 着メロは曲の権利くらいだったが、着うたは曲、歌詞、演奏者など関連者が増えて権利も増えるため調整が難航した模様。